【保健師監修】産褥期・産後の外出、いつから大丈夫?

【監修・執筆】保健師:石山亜由美

「産後の肥立ち」という言葉があるように産後のママの体は、しっかりと休めることが大切という話はよく聞きます。「いつから妊娠前の生活に戻れるの?」と疑問に思うママもいることでしょう。

ここでは、産褥期に起きる体の変化や外出OKな時期、外出や日常生活での注意点など、保健師の視点から詳しく解説します。ご自身の体調に合わせて、無理をせず産後の外出を楽しめるよう、参考になさってください。

そもそも産褥期とは?

出産後すぐから8週間ごろまでは、体が妊娠前の状態に少しずつ戻る時期で、この時期を「産褥期(さんじょくき)」と呼びます。産褥期の女性の体は、妊娠・出産で変化した骨盤や子宮、ホルモンバランスなどを回復(復古ともいう)させますが、個人差もあり、また産褥期の過ごし方によっても回復度合いが異なります。

ここでは、産後の4つの変化について解説していきます。

産褥期の全身の変化

出産すると体温や血圧、血液成分などが徐々に妊娠前の状態に戻ります。産褥期は、会陰切開の縫合部分に痛みやかゆみ、排尿のしづらさなどを感じる時期でもあります。

また、妊娠・出産で靭帯が緩んだ骨盤は不安定な状態です。体に負担のかかる動きをすると、骨盤が適切な位置に戻りきらない可能性も。その結果、女性ホルモンの分泌や姿勢などに影響し、腰痛や痩せにくい体質、尿漏れなどにつながります。

産褥期以降、ホルモンや月経周期の回復

妊娠時に血中濃度が高まった女性ホルモンは、出産時に胎盤と同時に排出され体の中から一気になくなり、ゼロに近い状態になります。

授乳をしている場合は、乳汁分泌を促すプロラクチンが上昇するため、月経開始に必要なエストロゲンは抑えられています。一般的にエストロゲンは産後1週間で妊娠前の値に戻るとされており、離乳によって月経が再開したり、産後2ヶ月頃に月経が再開したりと個人差が出てきます。

産褥期から、子宮の回復

産後の子宮底の長さは約11~12㎝、臍下指3つ分の位置にある状態から、妊娠前と同じ大きさに戻るまで約6週間かかります。子宮の緊張度や子宮頸部の復古も2~3週間要し、それまでは体を冷やしたり過度に疲れさせたりしないことが大切です。

産褥中は、胎盤や子宮内膜から剝がれ落ちた分泌物である悪露が続いています。産後すぐは赤色の悪露が、おおよそ3週間経過すると白色に、4~6週間経過する頃に止まります。

産褥期以降の乳房の変化

妊娠中に乳汁分泌の準備をしていた体が、産褥期にプロラクチンが上昇することで本格的な乳汁分泌が始まります。産後2~3日間は、初乳といった黄色味がかった母乳が少量出ますが、産後3日を超えると乳房が岩のように固くなり、初乳の10倍以上の母乳が分泌されます。

産褥期の母乳は、体への負担や精神的に大きなストレスで分泌が抑えられる場合もあります。授乳期間は個人差が大きく、産後1ヶ月以内にストップするママや、産後2年以上経過しても母乳が出るママもいらっしゃいます。

産後の床上げの時期

産後は約3週間(21日間)は、ゆっくりと体を休めるため、お布団を敷きっぱなしにして赤ちゃんのお世話をする時期と昔から言われています。出産で使った体力が少しずつ元に戻る産後3週間ころが、床上げに適した時期とされています。ただし、床上げの時期は明確に決まっていません。ママ自身の体力や体調に合わせて、ゆっくりと床上げしていくことをおすすめします。

また、元の日常生活と同様の動きができるのは、産後1ヶ月健診を終えてからと考えてよいでしょう。それまでは、疲れたら横になって休み、家事など無理をしないことが大切です。

産後・産褥期のママの外出OKはいつから?

産後・産褥期のママが、買い物など元の日常生活と同様に外出できる時期は、産後1ヶ月健診で体の回復が順調と言われてからとなります。

ただ、健診までの間に家庭の状況によっては、ママが外出しなければならないこともあります。基本的には1ヵ月健診を待つことが理想ですが、短時間で自宅から近い場所への外出にとどめ、体に負担をかけたり無理をしたりする外出は避けましょう。

まずは、産後3週間を過ぎた頃から体調に合わせて、赤ちゃんとゆったり外気浴をすることから始めてみましょう。

産後の外出、気を付けること

産後1ヶ月健診で外出OKと言われたとしても体の回復は完全ではないため、活発な外出は控えましょう。無理をすると回復が遅れたり、体のどこかに不調が出てきたりする可能性があります。

まずは体調を最優先に、産後の外出における注意点をご紹介します。

自宅の近場にお散歩するところから始める

まだ骨盤が不安定な時期に激しい運動は避け、まずは自宅から近い所へお散歩することから始めましょう。短時間で、何かあってもすぐに自宅に戻れる場所を目的として、ゆったりと外出することをおすすめします。

疲れたら無理しないで休む

外出中に腰痛が出てきたり疲れてきたりする場合は、どこか座れる場所を探しましょう。産後は貧血にもなりやすい状態ですので、疲れを我慢して無理に歩いて倒れてしまっては大変です。無理せずに休みながら、少しずつ外出の時間を増やしましょう。

人混みがある場所を避ける

産後、とくに産褥期は体が完全に妊娠前の状態に戻っていない時期であり、感染しやすい状態になっています。人混みが多いところは避けて、インフルエンザやコロナウイルスなど流行り風邪の感染を予防しましょう。

車の運転は避ける

産後は集中力が低下しており、短時間でも車の運転は危ない場合があります。どうしても車を使わなければならない用事は、パパや家族の方の協力を得ることを一番に考えてみましょう。

重い荷物を持つことは避ける

産後のママは、重い荷物を持つことで骨盤がゆがんだり腰痛が悪化したりとトラブルが生じやすいです。体が回復するまでは、ネットスーパーを利用したり、パパや家族の方に買い物を手伝ってもらったりと、状況に合わせて方法を考えていくことが大切です。

赤ちゃんとのお出かけは赤ちゃんに合わせて無理しない

産後ママの外出は、基本的に赤ちゃんと一緒である場合が多いでしょう。ただ、赤ちゃんとの外出は荷物が多かったり、赤ちゃんを抱っこしたりとママの負担が大きくなります。

急用の外出でないかぎり、赤ちゃんのペースに合わせ、自分の体調を見ながら無理しないことが大切です。

産後の入浴はいつからOK

産後の入浴は、1ヶ月健診まではシャワーで済ませ、医師から子宮の状態を診てもらい許可が出てから湯船につかることが一般的です。

産後すぐの子宮は、まだ数mm程度開口しており悪露の量も多いです。子宮が回復する産後3週間頃になると、子宮も閉鎖し悪露の量も減ります。まだ子宮が開いている時期に湯船につかると、お湯の中の雑菌が子宮内に入り込む危険があります。そのため、1ヶ月健診での診察を待つことをおすすめします。

もし、健診前に入浴してしまった場合は、下腹部の痛みや発熱などの感染症状がないかどうか数日間は様子を見ます。何か違和感があれば、1ヶ月健診を待たずに病院へ受診しましょう。

その他産褥期・産後に気を付けること

産後の外出や入浴以外でも、産褥期・産後の生活では気を付けることがたくさんあります。この時期の過ごし方によっては、今後の体に不調が現れる場合も。そこで日常生活を送る上での注意点について、主に6つの視点からご紹介します。

水仕事などの家事はなるべく避ける

産褥期は、料理や食器洗い、掃除、洗濯などを出来るだけパパや家族の方に協力してもらいましょう。ママは、水仕事などの家事を避けた方が体の回復のためです。どうしても、ママがしなければ家庭が回らない状況の場合は、家事の合間にしっかり休憩を取ることを意識しましょう。

家事代行サービスなどを利用するのもひとつの手です。

早い時期からのダイエットは控える

産後太りを気にしてしまうこともあるとは思いますが、あまり早い時期からダイエットを始めることは避けましょう。体を順調に回復させるためには、鉄分や葉酸、カルシウムなど不足しがちな栄養素をしっかりと食べ物からとることが大切です。

食事制限のダイエットではなく、骨盤底筋群や凝り固まった筋肉を柔らかくするストレッチのような、ゆったり運動することから始めましょう。

長時間立つ・歩くことは控える

長時間立ちっぱなしや歩くことは、骨盤への負担がかかり歪みに影響する場合があるため控えましょう。少しでも腰痛が出てきたら、ゆっくり座って休むことが大切です。

体を温める

産後の体は、全身が変化している時期です。体を温めて、ゆっくりと過ごすことで回復を促します。体を冷やすことで、疲れやすくなったり肩こり・腰痛などのトラブルにつながることも。

夫婦生活(性生活)は医師からOKの許可が出てから

夫婦生活(性生活)は、子宮の復古が順調であり、医師からOKの許可が出る1ヵ月健診以降に再開することをおすすめします。その際は、下腹部や子宮、排尿時に痛みがあれば無理はしないでください。また、妊娠希望がなければしっかりと避妊することが大切です。

マタニティブルーズ・産後うつに注意する

出産直後から1週間以内に出現しやすいマタニティブルーズは、「理由もなく涙が出る」「食欲低下」「眠れない」などの症状がありますが、一時的なもので治まります。

産後2週間~3ヶ月頃が発症のピークである産後うつは、「気分の落ち込み」「疲労感」だけではなく、「子供への無関心」といった症状が現れます。無理をせず十分に休養し、症状によっては受診相談をしてみましょう。自分では気が付きにくいこともあります。パパや周囲が気を配ってあげることが大切です。

周囲の手伝いやベビーシッターを活用して体を休めましょう

産後・産褥期のママは、心身ともにゆっくりと休養することが大事な時期これから先の赤ちゃんとの暮らしを元気に過ごすためにも、産後・産褥期は無理をしないことが大切です。

外出やおでかけは短時間で近場から始め、無理せずに疲れたら休みながら、産後の外出を楽しみましょう。しかし、赤ちゃんを連れての外出は大変です。体を休めるためには、パパや家族の方の手伝い、ベビーシッターサービスを活用して、一人でゆっくり外出して気分転換や一人の時間を確保して体を休めるようにしましょう。

無料で利用可能!「一時預かり」としての東京都「ベビーシッター利用支援事業」

この支援事業では、事業を実施する区市に住んでいる保護者が、一時保育などが必要になった場合に利用料無料でベビーシッターが利用できます。利用できる時間数の上限はあるものの、「保育認定」が不要で事前の区市への手続きも必要ありません。お住いの自治体が実施区市町村に該当していれば、とても利用しやすい内容です。

対応している区市は下記の通りです。

中央区文京区豊島区北区荒川区葛飾区武蔵野市

※2021/9/16現在、東京都福祉保健局HPより

一時預かりでの「ベビーシッター利用支援事業」を利用する際は、東京都福祉保健局のホームページに掲載されている事業者一覧の中から希望の事業者を選択し、直接事業者に利用申し込みを行います。ポピンズシッターも認定業者のため、一時預かりとしての「ベビーシッター支援事業」をご利用いただくことができます。

ご利用の際は、ポピンズシッターにご登録いただだき、利用月の翌月2営業日目までにお申し込みください。

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【監修・執筆】保健師:石山亜由美

看護師・保健師
Webライターとして働く1児のママ。オンラインで健康相談やメンタルヘルスの相談のお仕事をしながら、医療・健康系の執筆を中心にWebライターとして活動中。

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