お子さま・保護者さまに伝わる「クッション言葉」「肯定言葉」の使い方
横森さや
保護者さまやお子さまとお話をする際、少しの工夫で伝わりやすくなるコツがあります。とくにはじめての保護者さま・お子さまとのコミュニケーションでは、「クッション言葉」や「肯定言葉」を使うと伝わりやすく、行き違いや誤解が生まれにくくなります。
保護者さまに伝わりやすい「クッション言葉」のコツ
はじめての保護者さまとのコミュニケーションではとくに、「クッション言葉」が効果的です。お尋ねする・お願いする・お断りするときに心がけてみてください。
お尋ねする時
「お伺いしたいことがあるのですが」
「差し支えなければ」
お願い・相談がある時
「お手数をおかけしますが」
「お忙しいところ申し訳ございませんが」
「お出かけ間際に恐縮ですが」
お出かけ間際に申し訳ございませんが、リモコンの扱い方とお子さまのお着換えの場所を教えていただけますでしょうか。
お断りする時
ルール上お受けできないご依頼などの時も、ていねいにお断りすることでトラブルを防げます。
「ご意向に沿えず申し訳ございませんが」
「せっかくですが」
「心苦しいのですが」
「あいにく」
お受けできず大変心苦しいのですが、お子さまの安全のためペットと一緒のお散歩はできかねます。
上手く伝わらなかった時
悪気はないのによい形で伝わらなかったり、双方で認識のずれが生じてしまったときは、こんなクッション言葉と共にお伝えするとよいでしょう。
「わたくしの説明が足らず申し訳ございません」
「言葉足らずで失礼しました」
お子さまへのお声がけには「肯定言葉」を意識しましょう
お子さまにお話をする時には、「肯定言葉」がとても大切です。意外と使いがちな「否定言葉」→「肯定言葉」への言い換え方をご紹介します。
「否定言葉」が伝わりにくいのはなぜ?
お子さまに「否定言葉」が伝わりにくい理由は3つあります。
お子さまが理解しにくい文になる
お子さまは「〇〇しちゃダメ」といった『否定言葉』をとっさに理解できません。
大人でもたとえば「赤いリンゴを持たないで」と言われた時、とっさに浮かんだのは「赤いリンゴ」ではないでしょうか。「持たないで」を瞬時にイメージするのは難しいものです。
行動がイメージできない
たとえば「お部屋で走らないで!」と言われても、お子さまは次の動作をイメージしにくいものです。「じゃあどうしたらいいの?」と感じるため、すぐに止まれなかったり、声の勢いで止まっただけという事態になりがちです。
走らない=歩く
という判断はお子さまにはまだ難しいのです。
怖いと感じることも
大人から強い『否定言葉』をかけられると、お子さまが萎縮してしまうことがあります。「怒られた」「怖い」と感じることもあります。
「肯定言葉」のコツ
「肯定言葉」とは、つい使ってしまう否定語を肯定語に置き換えた話し方です。
たとえばお子さまが室内を走ってしまい危ない時「走らないで!」というのではなく、「歩こうね」という言葉に置き換えて伝えます。
「〇〇しないで」→「△△しようね」
すぐに理解するのが難しい「否定言葉」を使うよりも、「△△だから〇〇しようね」と肯定的に伝えた方が理解しやすく、次の具体的な行動も伝えることができます。また、肯定的に伝えることで、お子さまも大人も穏やかな気持ちで保育時間を過ごせるようになります。
「肯定言葉」に変換!
ありがちな「否定言葉」を「肯定言葉」にしてみましょう。
- 早くしてね
- 鬼(おばけ・怖いおじさん)が来るよ
- 置いていっちゃうよ
- ダメだよ
- 静かにね! など
早くしてほしい時
「早くしてね」はつい使ってしまう言葉です。
言い換えはこれ!
「早くお片づけをしてお出かけしよう」
「よーい、どん!」
鬼(おばけ)が来るよ・来ないと置いていっちゃうよ
脅しになってしまうこの言葉。これらを使用する方は少ないかもしれませんが、効果がてきめんのため困った時につい出てしまうことも。保護者さまの中には、意識的にこうした言葉を使用しないで育児なさっている方も多数いらっしゃいます。
言い換えはこれ!
「〇〇だから〜しよう」
おうちに帰っておやつにしよう/お着換えして公園に行こうか など
否定や恐怖心で促すのではなく、その先のメリットも一緒に伝えるのがポイントです。
○○しちゃダメ
「ダメ」もつい言ってしまいがちなワードではないでしょうか。
わかりやすく伝わりやすい言葉ではありますが、お子さまは理由もわからず、一方的にダメ出しされたと感じます。その結果、納得できず泣きわめいたり、反発心を感じてしまうことも。
言い換えはこれ!
「やってみたかったんだね…でも危ないから一緒にやろう」
「こっちはどう?」
「ダメ」と否定する前に、まずは「やってみたい」お子さまの気持ちを受け止めてあげましょう。その後やめてほしいことを伝えると否定されたとは思わず、肯定的に話を聞くことができます。また、「これは危ないからこっちはどう?」と代替案を出すのもおすすめです。
静かにしてほしい時
静かにしてほしい時に使ってしまいやすいこの言葉ですが、だいぶ強い命令口調ですよね。
言い換えはこれ!
お口はチャックのままでいてね
お口は閉じて静かにしようね
すぐに役立つ!「肯定言葉」リスト
- 「立ちません」→「座っててね」
- 「動かないで」→「ここで止まっててね」「お地蔵さんのまねっこしてね」
- 「さわらないで」→「みてるだけね」「そっとしてあげようね」
- 「こっちに来ないで」→「そこで待っててね」
- 「大きな声を出さないで」→「小さな声で(アリさんの声で)お話ししてね」
- 「そっちに行かないで」→「ここにいてね」「先生のそばにいてね」
- 「たたかないで」→「おくちでお話してね」
- 「こぼさないで」→「両方のおててで持って」「もう少し前に置こう」
- 「手を離さないで」→「おててをつないでいてね」「おててをギュッと握っていてね」
- 「よそ見しません」→「こっちをみててね」
- 「のぼらないで」→「下に降りてね」
すべてを記憶しなくても、ちょっとしたコツがつかめれば自然に出るようになります。
お子さまの気持ちを受け止める
なんといってもまずはお子さまの気持ちを受け止めましょう。いきなり頭ごなしに否定をせずに
「〇〇ちゃんは△△がしたかったんだね…でもイタイイタイしちゃうからやめようね」
というように、行動を否定する前に、一度気持ちに寄り添い共感することがポイントです。
お子さまの行動には理由があります。大人目線では危険なことやしてほしくないこと、やめてほしいことも、お子さまの目線では「やってみたい!」という興味関心からきていることもめずらしくありません。悪いと思ってやっているわけではないのです。
「してほしいこと」を伝える
「〇〇しないで」ではなく「〇〇してね」と伝えましょう。
たとえばお子さまが食事中に立ち上がってしまった時も、「立たないよ」というよりも「座ろうね」と伝えた方がお子さまには理解しやすく、行動にうつしやすいものです。
行動した先の「いいこと」を伝える
行動した先のメリットを伝えるというものがあります。
「〇〇すると□□というたのしいことがあるよ」と、やめてほしい行動とセットで明るい結果を伝えるのがポイントです。「たのしいことがある」と思うと、大人もそれを目指して頑張りたくなりますよね。単に「早くしなさい」と言われるより「お片づけしたらお外に遊びに行こうね」のほうがやる気が出るものです。
お子さまに伝えたいことがある時は、否定言葉ではなく肯定言葉の方が適している理由や、置き換えリストなどをお伝えしました。肯定的な言葉がけでお子さまは「認めてもらえた!」「できた!」と感じることが増え、自信を持って行動できることが増えてくるかもしれません。
横森さや
認可保育園で13年働いていた保育士。ベビーシッター、家事代行経験もあり。2児の母でワーママとして頑張るライター。
差し支えなければ、お食事後のお片付けもさせていただきますが、シンクの中でよろしいでしょうか。