お子さま感染しやすい「冬の病気」とケア方法
【監修・執筆】保健師:石山亜由美
気温が低くなり空気も乾燥する冬は、さまざまな病気が流行する季節です。寒くなることで免疫力が低下したり、空気の乾燥によりウイルスが広がりやすくなったりといったことも原因に。
お子さまの場合は特に、自分で症状を訴えられず、体も未発達であるために短時間で重症化もしやすいのが特徴です。
ここでは、お子さまが罹りやすい冬の病気について、症状や保育に携わる上での対処法、緊急時のサインなどを、保健師よりご紹介します。
お子さまが冬に罹りやすい病気の種類とケア方法
11月頃~3月頃の冬に罹りやすい病気には、ウイルス性胃腸炎、インフルエンザ、RSウイルス、水疱瘡、溶連菌感染症があります。
以下には、それぞれの症状、かかってしまった時の注意点などをまとめました。なお、「病児保育」で対応できる範囲はこちらの「お仕事ガイド」でご確認ください→ 記載のないものは対応できません。
お仕事ガイド
ウィルス性胃腸炎(ロタ・ノロ)
ウィルス性胃腸炎は、ロタウイルス・ノロウイルスなどが胃腸炎に感染して起こるウイルス性の病気です。これらのウイルスは、空気が乾燥した冬に活発になり感染力を強めます。
共通している症状は、「発熱」「下痢」「おう吐」であり、お子さまの場合は「乳幼児嘔吐下痢症」ともいわれています。
ロタウイルスによる胃腸炎の特徴
- 感染力が強い
- 感染した人の排泄物やおう吐物に触れたことで感染(空気感染)する
- 高熱が続く
- 酸っぱい匂いで、白っぽい水様便が出る
- 勢いよく嘔吐する
- 脱水になりやすい(お子さまは点滴や入院になることも多いです)
- 2~3月に流行しやすい
ノロウイルスによる胃腸炎の特徴
- ウイルスに汚染された食べ物、加熱調理が不十分な食べ物をとることで感染する
- 高熱にはなりにくい
- 突然吐く、下痢、腹痛
- 少量のウイルスでも感染する力があり、集団感染が起きやすい
- 症状は1~2日ほど続き、回復に向かう
- 2度、3度と罹ることもある
もし、お子さまがこれらのウイルス性胃腸炎にかかっている場合は、保育の際は次のような点に注意してください。
【胃腸炎に罹ったお子さまを保育するポイント】
- 脱水を予防するために、水分と塩分が含まれた経口補水液をとる
- 二次感染を防ぐために、排泄物やおう吐物に直接触れないようにマスクや手袋をする
- ノロウイルスで汚染された場合は、次亜塩素酸ナトリウムの漂白剤で消毒する
- 汚染物は乾燥する前に素早く処理する(乾燥でウイルスが舞い上がってしまうため)
- 汚染物の処理で使ったものは、密閉された袋にしっかりと入れておく
- 手洗い、うがいを行う
- 部屋を十分に換気する
- アルコール消毒を徹底する
- ノロウイルス・ロタウイルスは、ノンエンベーロープウイルスという仲間のため、ノンエンベーロープウイルス対応したアルコールの手指消毒があるのが望ましいです
感染したお子さまの体調を注意深く観察することと、保育者が二次感染しないように環境調整することが大切です。
インフルエンザ
インフルエンザウイルスにはA型やB型があり、毎年流行する型が違うことが特徴の感染症です。主に、感染した人の咳やくしゃみなどの飛沫が空気中に漂って、近くにいる人が吸い込んでしまうことで感染します(空気感染)。他にも、ウイルスが付着した手で触ったドアノブなどを間接的に触れることで感染する経路もあります。
インフルエンザの症状
- 39度前後の高熱が5日以上続く
- 悪寒、頭痛、だるさ、鼻水、咳、喉の痛み
- 腹痛、下痢、嘔吐などの胃腸症状
【インフルエンザに罹ったお子さまを保育するポイント】
- 室内の換気、保湿、保温を行う
- 保育者はマスクをつけ、手洗い、うがいをしっかり行う
- 脱水を防ぐために、水分補給と食べられるものを食べさせる
(吐き気がある場合は落ち着いてから) - 睡眠が大切。なるべく眠れるよう配慮する
インフルエンザは、抗インフルエンザ薬を適切なタイミングで使用することで、辛い症状が短期間で終わることが期待できます。もしもお子さまの保育の中で、インフルエンザの症状がみられるなど感染の疑いがある場合は、早めに保護者さまにお伝えしましょう。
RSウイルス
RSウイルスは、呼吸器系の感染症です。2歳ころまでにほとんどのお子さんが感染するといわれています。主に、感染している人の咳やくしゃみで飛沫感染したり、ウイルスが付着したものを間接的に触ることで接触感染したりします。
RSウイルスの主な症状
・鼻水、咳などの軽い症状で終わることがほとんど
・1~2週間で治ることが多い
・2歳以下の乳児の場合は、気管支炎や肺炎などの重症化しやすい
RSウイルスには予防薬はなく、症状を和らげる対症療法が主になります。
【RSウイルスに罹ったお子さまを保育するポイント】
- アルコール消毒による手洗いや環境衛生を行う
- 室内の換気、保湿、保温を行う
- 水分補給をしっかり行う
- 乳児の場合は重症化しやすいため、とくに呼吸に注意して観察する
軽い風邪症状で終わる場合もあれば、重症化することもあるため、ひどい咳や息苦しさがないか、お子さんを観察することが大切です。
水疱瘡
水疱瘡は、水痘・帯状疱疹ウイルスの感染が原因で起こる感染症です。主に、保育園や幼稚園に通うお子さんが集団感染しやすい、強い感染力を持ったウイルスでもあります。水疱瘡は、とくに冬に流行しやすい病気のひとつです。
主な感染経路は、空気感染や飛沫感染、接触感染などがあり、水疱や膿みをもった水疱に感染力の強いウイルスがいます。
水疱瘡の主な症状
以下の順で症状が出てきます。
- 37~38度前後の発熱と発疹が現れる
- 半日~2日ほどで全身に広がる
(発疹は赤く、かゆみがある) - 水疱は乾き、かさぶたになって剥がれ落ちる
- 発疹が出てから7日程度で治る
かさぶたには感染力のあるウイルスはいないため、二次感染を抑えるためには、水疱の段階での予防が重要です。
【水疱瘡に罹ったお子さまを保育するポイント】
- 口の中に水疱があると食べるときに痛むため、刺激の少ない柔らかい食べ物を与える
- 水疱をかかないようにする
※できればお子さまの爪は短く - 発熱がある場合は、脱水にならないように水分補給を促す
妊婦さんは注意!
保育者が妊娠中の場合は、お腹の赤ちゃんにウイルス感染してしまうリスクがあるため、とくに水疱瘡の二次感染には注意が必要です。妊娠中のかたは、水疱瘡のお子さまとは接しないほうがよいでしょう。
溶連菌感染症
溶連菌感染症は、溶血性連鎖球菌と呼ばれる細菌を原因として感染する病気です。およそ90%の人は、A群溶連菌による感染症になります。感染経路は、感染している人の咳やくしゃみによる飛沫感染が主になり、家庭内感染や保育園・幼稚園での集団感染が多く発生します。
溶連菌感染症の主な症状
- 38~39度の発熱、喉の痛み
- 体や手足に小さく赤い発疹
- 舌にイチゴのようなツブツブがみられる
- リンパ節の腫れ
- 腹痛や嘔吐などの胃腸症状
【溶連菌感染症に罹ったお子さまを保育するポイント】
- 刺激の強い食べ物は避けて、消化のよい食べ物を与える
- 脱水を予防するために水分補給を促す
- 室内の換気と保湿をしっかり行う
- タイルやコップなど、感染している人と共有しない
- 手洗い、うがい、マスクを徹底する
- 抗生物質が処方されている場合は、忘れずに飲み切る
特に、喉に強い痛みがある溶連菌は、水分補給や炎症を抑えるために安静にしていることが大切です。
病児保育のお子さまケアの基本
病気の種類別にケア方法を記載していますが、いずれも以下のようなケアの基本を覚えておきましょう。
- 発熱している場合はとくに、水分をこまめに取る(脱水予防)
※吐き気がある場合は、落ち着いてから - 呼吸や様子を見守る
- 部屋の空気を入れ替え、温度や湿度に気を配る
- シッター自身への二次感染に注意する(手洗い・アルコール消毒など)
保育中の嘔吐などは、正しく処理をしましょう
ノロウイルスやロタウイルスなどのウイルス感染症の場合は、感染者の嘔吐物にウイルスが大量に排出されます。保育中に嘔吐があった場合は二次感染を防ぐために、次の処理方法を行いましょう。
嘔吐物の正しい処理方法
- 嘔吐物を処理する際は、使い捨ての手袋やマスクを装着してから触れる
- とくにノロウイルスで汚染された場合は、次亜塩素酸ナトリウムの消毒を行う
- 汚染物の処理で使用したものは、袋に入れて密閉する
- 処理後は、手洗いやうがい、室内の換気を行う
空気中にウイルスが浮遊していることもあります。窓を開け感染予防対策を徹底してから処理をしましょう。
こんな時は緊急!お子さまの気をつけたい症状
お子さまは病気にかかると急変したり重症化するリスクがあります。異常がある場合はすぐに保護者さまに連絡しましょう。
いつもと違うご様子・症状が出た場合は、保護者さまにおしらせをしてください。
保護者さまに連絡が取れない場合、必要に応じて救急車を要請の上、ポピンズシッターサポートへご連絡ください。
「病児保育」に持参すると便利なアイテムとは?
病児保育に臨むとき、あるいは冬のあいだは病児保育でなくても、お子さまが急に体調を崩すことがあるかもしれません。下記のようなものを用意し保育にあたると、いつ・何が起きても対応しやすくなります。
- 使い捨てのビニール手袋
- 予備のマスク
- ビニール袋
- シッター自身の着替え
- 消毒液
- メモ帳とペン(記録用)
- 身分証明書(代理受診、病院同行用)
保護者さまに確認・ご用意をお願いしたいこと
「病児保育」の際は当日お引き受け時に、保護者さまに確認をお願いします。
- 保険証・医療証
- 母子手帳
- 体温計
- 診察カード(受診がある場合のみ)
- 保育当日の引受書(「ポピンズシッター病児保育連絡票」、チェックリスト)★
- 与薬依頼書(与薬がある場合のみ)★
- 通院同行依頼書(代理受診、病院同行がある場合のみ)★
「病児保育」対応はどなたでも可能です
病児保育は資格は問いません。下記の手順で対応いただけます。
- 病児保育の注意事項や条件を、自己紹介文の「ご依頼の条件・注意点」にご記載ください。
- 保育・サービス研修の「病児保育」をすべて受講の上、下記より申請ください。
全ての記入が完了しましたら、”変更を申請する”ボタンを押していただき、担当者からのご連絡をお待ちいただくようお願いいたします。
「通常保育」と「感染症対応」
病児保育の「通常保育」で対応できるのは以下の通りです。
風邪症状(37.5度以上の発熱、下痢嘔吐、咳、鼻水)/溶連菌感染症/RSウィルス/手足口病/ヘルパンギーナ/突発性発疹/とびひ
病児保育の「感染症対応」の範囲は以下の通りです。
インフルエンザ/ウィルス性胃腸炎(ノロ、ロタ)/水痘(みずぼうそう)/百日咳/アデノウィルス(プール熱、咽頭結膜炎)/麻疹(はしか)/風疹/流行性耳下腺炎(おたふく)/りんご病(伝染性紅斑)
【監修・執筆】保健師:石山亜由美
看護師・保健師
Webライターとして働く1児のママ。オンラインで健康相談やメンタルヘルスの相談のお仕事をしながら、医療・健康系の執筆を中心にWebライターとして活動中。