安全な「食事介助」のために、知っておきたいこと

横森さや

保育の中でお子さまに食事介助をすることはめずらしくありません。

楽しい食事の時間ですが、食事介助は命に関わる事故につながる場合があります。正しい知識を身に付けて保育にあたりましょう。

この記事では、食事介助で気をつけたいポイントを詳しくお伝えします。

「指示されたもの以外は与えない」が鉄則!

ご存じのように現在はアレルギーの懸念も増えています、食事やおやつは、保護者さまより指示されたもの以外は与えないことが鉄則です。事前に必ず保護者さまに食事やおやつの場所や分量を確認するようにしましょう。

特に注意したいのは、誤嚥とアレルギー

お子さまの食事で、とくに気をつける必要があるのは「誤嚥(ごえん)」アレルギー」です。

小さなお子さまが喉に食品を詰まらせて窒息してしまう事故は後を絶ちません。またアレルギーも命に関わる事故につながります。食事介助では誤嚥とアレルギーには十分に留意する必要があります。

誤嚥を防ぐには

一般的に5歳以下のお子さまは気管が細いため物が詰まりやすい傾向があります。また、噛む力や飲み込む力が弱ったり、食事の時に動いてしまうなどの行動によって誤嚥が起こることもあります。

食事介助する際は、

  • 絶対に目を離さないこと
  • 必ず座った状態で食事をすること

を徹底しましょう。食事始めに水分から差し上げるのも誤嚥予防に効果的です。

~2歳児(乳児期)は誤嚥が起こりやすい時期

この時期はもっとも誤嚥(窒息)が多く、注意が必要な年齢です。自分で気をつけることができない年齢のため、大人の働きかけが重要です。

・離乳食は発達に合った形状のものを

食事は保護者さまにご用意いただいたものを差し上げることが鉄則です。

特に離乳食では、発達に合っていない形状の食材は、噛みきれず誤嚥につながることがあります。保護者さまにご用意いただいたものでも、食事中はお子さまを見守り、咀嚼できているか、飲み込めているか様子を見ながら差し上げましょう。

離乳食とアレルギーの基礎知識
https://smartsitter.jp/sitter/e_learning/88

動けるようになる3歳児~(幼児期)は、行動にも注意

乳児期より活発になるため動きによる事故が増える時期です。必ず座って食事に集中しましょう。お子さまの咀嚼を促す「もぐもぐ」「かみかみ」などの声掛けも誤嚥防止に役立ちます。

注意したい食材リスト

丸い形状の食材はとくに5歳未満のお子さまはそのまま与えないようにしましょう。固いものや弾力のあるものにも注意が必要です。

【丸ごとが危険な食材】
  • ミニトマト
  • ぶどう
  • さくらんぼ
  • 団子
  • うずらの卵

事前に保護者さまに確認のうえ、包丁で切るなどしてから差し上げてください。また、ぶどうやさくらんぼは口の中に皮が残りやすいため注意しましょう。

【飲み込みにくいパンやごはん】

意外かもしれませんが、ごはんやパンも、誤嚥や窒息しやすい食材です。ごはんは粘りがあり、パンは口の中の水分を吸収しやすいため飲み込みにくくつまらせやすい食材です。汁物や水分で口の中を潤しながら、少しずつ食べるよう見守りましょう。

【ピーナツや豆は原則NG】

ピーナッツや大豆などの硬い豆類をそのまま与えるのはやめましょう。保護者さまにいただいたおやつの中にも、意識せずに「豆・ナッツ」がそのまま含まれていることがあるかもしれません。迷ったら豆類はよけておくのが無難です。

※「節分」のあとの落ちている豆にも注意しましょう。大豆は小さいですが喉につまりやすく、水分で膨らむため大変危険です。

【硬いものや弾力があるもの】
  • りんごや梨
  • 生のにんじんやきゅうり、スティックのセロリ
  • イカやタコ
  • こんにゃく(こんにゃくゼリーも含む)

りんごは薄くスライスする、棒状のものは細くする、こんにゃく(こんにゃくゼリー)も薄く小さく切るなどの配慮が必要です。

りんごや梨は生の状態では詰まりやすい食材です。国のガイドラインでは、離乳食完了期(12〜18か月頃)までは加熱して提供することが推奨されています。1歳児が数ミリに刻んだ生のりんごを喉に詰まらせ死亡する事故も発生しているため、十分注意が必要です。

<参考>こども家庭庁「教育・保育施設等における事故防止及び事故発生時の対応のためのガイドライン
【1歳未満ははちみつNG】

はちみつは1歳未満のお子さまに与えてはいけません。はちみつにはボツリヌス菌が混ざっていることがあり、腸内で菌が増え食中毒を発症する場合があります。はちみつそのものだけではなく、はちみつが含まれる加工品でも発症する可能性があるため、1歳未満のお子さまにはちみつが含まれた食材は与えないようにしましょう。

保護者さまにいただいたおやつでも、気になる場合は成分の確認を。

誤嚥につながる行動を確認

誤嚥を防ぐには、お子さまの行動面でも配慮や注意が必要です。

  • 食事に集中できる環境を作る
  • 立ち上がったり歩いたりしない
  • 水分で、喉を潤しながら食べる
  • ひとくちの量を見守る
  • 口に物が入っている時は、しゃべったり大声を出さない
  • 食事中はびっくりさせない
  • 食事中に眠くなっていないか注意する

アレルギーに十分注意

お子さまのアレルギーについては、保護者さまから指示があるとは思いますが、命にかかわることもあるのでアレルギーのあるお子さまの食事介助の際は特に注意しましょう。

【牛乳などの飲料にも注意】

保護者の承諾のないものを差し上げることは原則NGと理解していても、水分代わりに牛乳やジュースをお子さまが欲しがることなどあるかもしれません。しかし、牛乳や果汁でアレルギーを引き起こすこともあります自己判断で勝手に飲料を与えてはいけません。

アレルギーのヒヤリハット

ごきょうだいの保育の際、上のお子さまが卵アレルギーを伺っており、十分に注意していたのですが、下のお子さまのフライに添えてあったタルタルソースが、お子さまがふざけた拍子に飛び散ってしまい、上のお子さまの皮膚についてしまいました。タルタルソースが付いた箇所が赤くなってしまいました。

衛生上の留意点

食事介助は衛生面にも留意が必要です。

衛生面はここを確認!

  • 調乳は正しい手順で、適温に冷まして
    …ミルクの分量や作り方、お湯の場所を確認しましょう。
  • 食事介助の前には必ず手洗い
    お子さまの手洗いも促しましょう。
  • 哺乳瓶や乳首、食器は指定された清潔なものを使用
    …哺乳瓶を消毒する・しないなど、衛生に関する方針はご家庭により異なります。また、使用前の器具の場所も必ず確認しましょう。
  • 飲み残しのミルク・食べ残しの離乳食は与えない
    ミルクは菌が繁殖しやすいので、寝てしまって余り飲んでいなくても、再度作り直します。
  • 指示された以外のもの・時間で与えない
    …アレルギーの懸念や生活ペースの乱れにつながります。指示された食品・タイミング・分量以外には与えません。お菓子も同様です。
  • 食べ残しを捨てるか・保管するか事前に確認
    …お子さまの召し上がった量を確認する保護者さまもいらっしゃいます。食事の片づけはどの程度まで求められるか確認しましょう。
  • お子さまが使った食器・哺乳瓶は後片付けまでサービス範囲内
    …食器を洗うのか、中身を捨ててシンクに置くのか、冷蔵庫に入れるのか、片付け方法もご家庭により様々です。事前に確認してください。

調乳の手順はこちらでご確認ください

https://smartsitter.jp/sitter/e_learning/264

事前に必要な情報は保護者さまに確認し、丁寧に行い衛生面に配慮しましょう。

食事の環境を整えましょう

食事に集中するためには、環境を整えることが大切です。

保護者さまに、食事スペース・座る位置や椅子・食器(スプーンが良いかお箸か)など事前に確認し、お子さまがいつも通りの環境で食事ができるようにしましょう。

お子さまが食事するテーブルと椅子は、高さやサイズは、座った時にお子さまの胸の位置にテーブルがくること、その際ひじがテーブルに無理なく乗せられるように高さを調節しましょう。椅子が大きすぎて背もたれと背中の間に隙間ができてしまう場合は、クッションなどを間に入れてもよいでしょう。歩けるようになったお子さまは、食事中は足が地面や踏み台に着いていると安定します。

【食事の環境チェックポイント】

  • おもちゃや不要なものは片づける
    …食事に集中するために、不要なものは片づけましょう。
  • テレビ・動画は消す
  • 食事時間を決める
    …事前に保護者さまに普段の食事にかかる時間を確認します。ご指示いただいた時間をめどに時間がきたら終えるようにしましょう。「もっと食べさせたい」という気持ちで長い時間座らせていても、ダラダラ食べにつながります。目安としてはお子さまの1回の食事時間の目安は15分〜30分です。
  • 使いやすい食具を用意
    …お子さまが使いやすい食具を保護者さまに確認しておきましょう。

おいしそう、よくかもうね、ごっくんができたね といったお声がけで食事に集中できるように促しましょう

温めすぎ・やけどにも気を付けましょう

食事の温めの際の事故や、温めすぎにも留意しましょう。電子レンジで温めを行う場合は、ワット数やレンジの種類によって温まりかたが異なります。短めの時間に設定し、温度・様子を見ながら加熱すると安心です。

温めた食事は、必ず温度を確かめてからお子さまに差し上げましょう。

無理に食べさせない

小食なお子さまは「食に興味がない」ことも多いものです。「食べないと大きくなれないよ」等の声かけは、ますます食べる意欲を失ってしまうことになりかねません。

食事は完食することではなく、美味しく楽しいと感じることが大切です。完食を無理強いすることはやめましょう。好き嫌いや完食についての方針も保護者様に事前に確認できると安心ですね。

反対に食事の量が足りない場合もあるかもしれません。保護者さまがご用意くださったもの以外は絶対に差し上げないのが原則です。心配な場合は、足りない時はどうするかもお伺いしておくとよいでしょう。

・食事を楽しい時間にするために
https://smartsitter.jp/sitter/e_learning/94

まとめ:食事介助で事前に確認しておきたいこと

今回は食事介助を安全に行うための7つのポイントをお伝えしました。最後に、食事介助で事前に保護者さまにお尋ねしておきたいことをまとめます。

  • 差し上げてよいもの
    飲料やおやつも含め、差し上げてよいものはすべて事前確認が必要
  • 残ったミルクや食事の取り扱い
    保存が良いか捨てるのが良いか
  • 食べきれない時・足りない時の対応
  • 調理の必要
    温める・小さく切る・つぶすなどが必要か
    必要な場合は使用する調理器具と場所も確認
  • 片付け
    どこにどのように片づけるのが良いか
  • 時間のこと
    おやつや食事の時間帯、1回あたりにかかる時間
  • 食事環境のこと
    食事スペース・座る位置や椅子・食器(スプーンが良いかお箸か)

シッターさんのあるある質問「こんな時どうする?」に回答します!

この記事は

横森さや

認可保育園で13年働いていた保育士。ベビーシッター、家事代行経験もあり。2児の母でワーママとして頑張るライター。

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